よく聞く「高い品質」という表現。
「品質」という言葉、よく分かってない状態で使っていませんか?というお話です。
ISO 9000という、品質に関する規格による定義では
「本来備わっている特性の集まりが、要求事項を満たす程度」とのこと。
正直、めちゃめちゃ難しそうですよね。
ちょっと噛み砕いてまとめてみましょう。
お財布を例に・・・
革製品の代表格、財布を例に話してみましょう。
まずお札、一万円札のサイズは幅160mm、この幅ジャストサイズのお札を想定しましょう。
この1万円札を1枚だけ収納する財布を作るのであれば、収納スペースは幅160mmだけあれば、
何とか事足りるはずです。
でも、一万円札ってキッチリ160mm幅で寸分の狂いも無いものなんでしょうか。
財布に使う革は伸びたり縮んだりしないものなんでしょうか?
・・・違いますよね。
お札って世の中でも相当に精度高く作られている物の一つだと思いますが、
それでも幅160.001mmの物もあれば159.999mmの物も、余裕であると思います。
製造段階でも起こり得るズレもあれば、使用と共に伸び縮みしたズレもあると思います。
革財布の製造でのズレはもっと大きく、0.1mm程度のズレは普通に起こり得るものです。
(余談ですが昔、抜き型屋さんに抜き上がり寸法の公差を聞いたとき、
だいたい0.3mm程度は考えておいてくださいとのことでした。)
*そもそも160mm幅のお札を入れるのに、160mm幅のスペースしかなかったら
使いにくくてしょうがない、、、という話は一旦脇に置いてます。
もし上記の、一万円札1枚だけ収納できる財布、
なおかつミニマムサイズで、という条件でオーダーを頂いたとしても、
私なら最低2~3mm程度の余裕は持たせます。
公差について・・・
163mm ±3mmというような表記、どこかで見たことありませんか?
この±3mmの部分が「公差」と呼ばれる表記です。
上記の意味するところは160mm~166mmまではOKですよ~、という表現です。
前項の札入れ財布のスペース幅寸法、ちょっとこの例で話を進めましょう。
公差とバラつき・・・
163mm ±3mmで実際に複数個製作してみて、
左の図の例のようだったらいかがでしょう?
全て良品だからヨシ、、、でOKの場合もありますが、
基本的には工程の見直し、もしくは仕様の変更が入ります。
なぜかというと、、、
寸法のバラつきが大きすぎる上、
寸法のピークが大きい側にシフトしています。
これでは数を増して生産していった場合、
寸法が仕様から外れてしまうものが必ず現れるからです。
次に左の図の例はいかがでしょう?
ちょっと数を増やして引き続き様子見は必要そうですが、
ピークシフトもありませんし、
バラつきも比較的小さいように見える、、、
なんとかイケそうな気がしませんか?
*ちょっとマニアックな方向けに、、、
左図でCpk=約1.45 になるようです。
「品質」を語る上で・・・
「品質」って何の答えです。
ザックリと言えば品質とは、
「求められている仕様に対して、どれだけ高いレベルの生産が出来ているか」の指標だと考えています。
今回の「求められている仕様」とは、一万円札を最小サイズで収納出来る事、となり、
「高いレベルの生産」とは、設計仕様163mm ±3mm内で、どれだけ少ないバラつきで生産できているか、となります。
そもそも仕様(=163mm ±3mm)が無い状態では、
品質が高いのか低いのか、評価のしようがないものです。
「高い品質は、正しい仕様と工程管理に宿る」、が今回の結言です。
蛇足・・・
ghostplant leather worksで使用している革について、「高い品質ではなく、高い品位」と前回記事で記載しましたが、
今回記事のような考えがあるため、このような表記としました。
仕様が付いてる革、私は不勉強ながら見たことがありませんし、
使っている革にも勿論付いておりませんので。。。