皆さまこんにちは。
本日のテーマはデザインと強度!
一見、実用性の無いようなデザインであっても、
強度に確実に効いてくる形状があるんです、というお話。
EA-008長財布を例に・・・
丸いカブセが可愛らしい、ウチでは主力の長財布の1つ。
大きく開くマチで、多くなりがちなカード類も大収納力!
女性的なシルエットのお財布ですが、意外と男性にもご好評頂いてます!
(のっけから宣伝で申し訳ないです(笑))
ここから本題・・・
ココの形状、マチパーツで隠れてしまい多少見にくいですが、
フラップ(写真右側)と本体背面(写真左側)を
1枚革で作ってます。
何故こんな無駄な形にしているのでしょう?
フラップ裏貼りと本体背面の裏貼りとで2パーツに分けた方が
真ん中くり抜いている部分の革を節約できますよね?
デザインのアクセント、、、という意味合いも
勿論あるのですが、それ以上の狙いがあるのです!
このような構造を採用した理由、ここって実は結構力が掛かりやすい箇所ゆえ、
その力を逃がす役割を期待して、このような形状になっています。
少々分かり難いかもしれないので、写真付きで。
この長財布は、背面側にお札を入れる機能を備えているため、
本体背面側と裏貼りとに、反対方向の力がかかります。
この時、本体背面部の裏貼りを独立したパーツとした場合、
縫い糸と革断面で、この反対方向の力を
抑え込まなくてはなりません。
勿論、そのような構造であっても、
やはり革という素材は強いもので、
短期的には問題ありません。
しかしながら札入れという機能の性質上、一日に何度もお札の出し入れが想定されるため、
長期使用を考えたときに不安が残る構造です。
具体的には、革がステッチに沿って裂けてしまうような不具合が起こる可能性があります。
(残念ながら、他モデルの実際の試作段階で起こった不具合です。)
そこで採用したのが、EA-008のような構造です。
これであれば反対方向の力は革に分散し、より頑丈な構造になると期待しました。
具体的には、実際に力が掛かる箇所(くり抜き部のエッジ)と、固定部(縫い目部)に若干のズレを作り、
このズレ分で力を吸収しようという発想です。
実はこの構造自体は、少ないながらも昔からある構造のアレンジです。
大量生産のブランドでは見たことはありませんが。。。
更に(写真では少し分かり難いですが、、、)くり抜き部の角を丸ポンチで落とし、
少しでも力が局所的にかからないような工夫を施しています。
*補足:マチと裏張りの境目は、ステッチで力を押さえるような形状になっていますが、
マチ自体で引張力を緩衝できているためOKとしています。
同じ構造は他モデルにも・・・EA-011
こちら、今年の秋冬の新作でリリースしたEA-011モデル。
ありがたいことにご好評頂いてます!
(宣伝はそこそこにしときます(笑))
この裏貼り革にも、ほとんど同じ形状を採用しています。
この構造を採用した財布、結構な数を出していますが、
革裂けの苦情は聞いたことがありません。
(というより、ウチのプロパー商品に関するクレーム、
「思ってたよりサイズギリギリ」的なお話以外、
驚くべきことに一度も頂いたことはありません。)
まとめ
今回の記事、強度を高めるために施したデザイン上の工夫、というテーマでお話させて頂きました。
ちょっとした工夫の積み重ねが、信頼性の高い商品を生むコツだと信じています。
本日の結言「定番の形にとらわれず、細かい工夫を積み重ねる」でお願いします。