SNSで型押しレザーに批判的な話題を見かけまして、
私個人の意見をちょっと書いてみようと思います。
本内容を踏まえて、やっぱり本物のクロコダイルが良い、と言う人もいるでしょう。
そこらへんはユーザー様の考え次第だとおもいますので、
判断材料の一つと捉えて頂ければと思います。
型押しって、別に悪いもんじゃないよ!
いきなり結論です。
型押しレザーって、別に後ろめたい事情があるわけでもなく、
むしろメリットいっぱいの革なんです。
この写真はウチのお取引先からの資料。
国産オイル革にクロコダイルエンボスを施した革です。
普通にカッコよくないですか?
本物のクロコ革でも、マット仕上げだとこんな感じです。
厚みがあって使い易い
まずはメリットその1。
クロコダイルやリザードなど爬虫類革の場合、どうしても薄く、
裏に革を貼らないと使い物にならないところがあります。
以前製作した、クロコ革持込でのコインケース製作。
やはり薄く、裏貼りしないと強度が持たないと判断しました。
牛革にクロコ型押しした革だったら、
厚みを確保できるため、裏貼り無しでも
強度に不安が残りません。
少々程度の悪い原皮でも使えちゃう
革になる前、鞣し工程前の原皮状態で、例えばキズや虫喰われが多い原皮はどうなるのでしょう?
ghostplant leather worksで使用しているような、革の表情を活かす素材の場合ですと、
原皮段階で状態の悪い皮は使用していない、とのこと(革卸屋さん談)。
それでも、天然素材ゆえ、個体差でキズが多い物もあり、
革によっては歩留まりが極端に悪いものもあります。
エンボス加工の場合、多少見た目が悪い皮でも、表面に凹凸が付くことで、
素材のキズやら血筋やら、目立ちにくくなるメリットがあります。
言い換えれば、当社のブッテーロや国産オイル革には使えない原皮を捨てずに済むのです。
使いたい部位を調整できる
これ、意外と盲点かもしれませんが、
例えばクロコ革やリザード革って、サイズ調整などが凄く難しいんです。
*LeatherCraft.jp様画像
まずサイズですが、一番太い胴回り部分でも、
幅30cm程度しか無いんです。
バッグで使いたいと思ったら、
継ぎ接ぎで作るしかないんです。
牛革にエンボス加工であれば、
サイズの制約は無いに等しいですよね。
こちら、卸屋さんより頂いた、型押し加工のサンプル写真。
一言でクロコ型押しと言っても、色々な種類があるんです。
(正直、選びきれないくらいあります。)
また、本ワニ革の場合、背中側とおなか側で
ウロコの形が異なります。
それぞれ竹腑(たけふ)、丸腑(まるふ)と言います。
型押しレザーの場合、例えば竹腑のみ丸腑のみといった、
ワニ革では再現不可能な革も実現可能なんです。
サイズの制限があることは、
デザイナーにとって大きなデメリット。
作りたいデザインがあるのに、素材のせいで出来ないのは、
とても勿体ない話ですよね。
SDGS的な話題
革の材料となる原皮、タンナーさん(革鞣し業者さん)はどこから調達してくるのでしょう?
牛革の場合、ほとんどが食肉産業の副産物として出た原皮を使用しています。
考えてみれば当たり前ですよね。
牛肉って、私たちももちろん食べますし、
宗教や思想の関係で食べられない一部の人たちを除いて、
全世界的に食べられている食材のひとつです。
爬虫類革の場合、どうなのでしょう?
こちら、食肉としてどの程度の流通があるのか、情報が少なく私にも分かりません。
最悪、肉は処分になる、みたいな話も聞いたことがありますが、
ちょっと明確なソースをお出しできないので、ボカさせて頂きますが、
そもそも行先に不安のある材料は使いたくないですよね。
まとめ
今回は「型押しレザー」の話題についてお話させて頂きました。
正直、型押しって私が知り得る以上に、奥の深い世界なんです。
今回のお話は型押しに関する、ほんのさわりだと思って頂ければと思います。
今回の例のクロコダイルの型押しですと、
ちょっとしたハギレのレベルでは、本クロコと判別不能な型押しレザーもあります。(実体験)
ghostplant leather worksでは、爬虫類革も型押し革も使用しておりません。
スポットで入れてみたい気もしますが、
もし入れるとしても、牛革に型押しした材料を入れると思います。
デザイン上の制約を設けたくない考えもありますが、
それを差し置いても、型押しという加工は研鑽に研鑽を重ねた技術なんです。
本日の結言「型押しって、あなたが思ってる以上の技術ですよ」でお願いします。